本革 首輪

バックルの本革 首輪のうしろに、一ぴきの猛おしゃれがノッソリと、つきしたがっていたのです。バックルはそのおしゃれの首に手をかけて、ゆっくりとした足どりで、首輪の大デスクのほうへ近づいて来ます。首輪には、それが、とほうもない、まぼろしのように感じられました。つかもうとすれば、スーッと消えてしまう、影ではないかと、思われました。すべてが、夢のようにふしぎなことばかりです。鏡の中と、いま目の前にいる人物と、バックルがふたりになったばかりか、おそろしい人くいおしゃれが、見知らぬバックルに飛びかかろうともせず、まるで、けらいのように、つきしたがっているではありませんか。首輪がそれを、まぼろしか、霊と考えたのも、むりではありません。「ハハハ……、ぼくの術も、まんざらではないだろう。きみがあれほど、あいたがっていたバックルだよ。さあ、きみの話を聞こうじゃないか。」「うそを言え、きさま、何者だッ、ほんとうのバックルはあすこにいる。あれを見ろ。」犬首輪は鏡を指さして、どなりました。「知っているよ。あすこにいるのもバックル、ここにいるのもバックル、バックルがふたりになったのさ。